大雨・台風が予想される時の避難と日常の備え

明らかに異常と考えてしまう日本の最近の夏

筆者は40歳を間も無く折り返す今年(2022年)、幼少期の頃の夏を思い出すとここまでの酷暑も珍しく、台風の被害も頻繁には耳にしていなかった印象です


つい昨日は深夜に山形県の最上川が氾濫、今日には石川県の梯川が氾濫、夕方のニュースでは放送されませんでしたが周辺各地で氾濫警戒水位を越える、もしくはギリギリの河川が続出

東北、北陸の全てを合わせて44もの河川が氾濫してしまいました


該当の地域では自治体より早い段階で避難の呼びかけがなされており、予想される水災に向けて命を守るための行動に注力されていました


これから本格的な台風シーズンを迎えます

この『今日』を教訓に日頃からの心構えと準備を強くお勧めさせて頂きます


この記事は2022年8月4日に書きました



大雨・台風時の避難



大雨・台風で被害が想定されるのは・土砂災害・浸水害・洪水害の3つが考えられます


台風は自身が居住している地域に被害をもたらすまでにはある程度の時間的余裕があるので落ち着いて備えることができます

しかし昨今の線状降水帯の発生時や(それを含む)記録的短時間大雨情報の発令時は、発令の直前、及び実際に降雨の最中に出されることも多いのでより迅速に避難が求められるでしょう


重要なのは『どのタイミングで避難を迫られても、落ち着いて行動できる事前の準備』をしておくこと


まさに備えあれば憂いなしです



数時間から3日程度の避難を考えて準備をする



台風襲来時は比較的時間がありますが、急を要する避難を迫られる場合(線状降水帯の発生時や記録的短時間大雨情報の発令時)は限定的な最低限の準備で避難所に向かいます

『家にあるものは全て財産』なのは皆さん同じですが、準備に追われて逃げ遅れては本末転倒です


絶対になくてはならないものだけを持って逃げることも時には必要でしょう(家の鍵、薬、水など)

万が一の時にそうならないように

  • 軽食(日数によって量を増やす)
  • 服装(なるべくリラックスできるもの)
  • スマホとモバイルバッテリー
  • 貴重品
  • 現金
  • オーラルケアグッズ(歯磨きよりは口腔内ウエットティッシュ)
  • 懐中電灯やランタン(停電時にトイレに行く用)



逃げ遅れることがないように両手が自由になるリュックサックに入れて手元に置いておきます

また大地震の時に比べて短時間で戻れることが多いので、非常用持ち出し袋とは分けて考えます 


夏が来る前に、雨の季節が来る前にリュックをひとつ準備しておくだけで焦らずに避難所に向かうことが出来るでしょう



自分が避難する避難所を確認しておく



ご自宅の周りの避難所はご存じですか?


昨今では随分と認知されてきましたが避難所とされている学校や公民館が災害警戒区域に含まれている場合があります

地域のハザードマップに注視してみると細かく記載されていて


『この学校は土砂災害警戒区域の中にある』

『この学校は地域一帯が浸水区域に指定されていて(浸水時は)開設されない』

最新版は常に市区町村のHPに掲示されています

当たり前の話ですが自分の家が浸水するかもしれないリスクがあった時、並びにある学校の体育館が浸水する可能性を考えなくてはなりません

  • 災害別(土砂災害・浸水害・洪水害)別に避難所を確認しておく※要ハザードマップ
  • 自宅から避難所までの道のりを歩いてみる


特に『自宅から避難所までの道のりを歩いてみる』は、避難時に雨が降って浸水が始まっていることを想定して行動します

平時に比べ時間がかかること、高齢者であればさらに時間を要することを考えておけば安心です


またやむ終えない場合を除き明るい時間に避難を終わらせておくことも忘れないでください

浸水時、洪水時にはマンホールの蓋が開いていることがあり落ちて溺れるケースがあります

足元が見えない夜の避難はリスクが倍増しかねません



気象庁HPのキキクルを活用する



テレビやラジオで情報を得る他に、気象庁のHPから『キキクル』でリアルタイムに近い情報を確認することができます

優れている点は

  • 土砂災害
  • 浸水害
  • 洪水害


それぞれの情報が10分おきに更新されているところ

災害時のトリアージの色分けとリンクして表示されているのでわかりやすいので重宝します


↑キキクル

↑内閣府・消防庁発行の避難トリアージ

  • 高齢者や避難に時間を要する方はオレンジで避難を開始(危険を感じた場合は高齢者等に限らず避難開始)
  • 該当地域に居住の全ての人はムラサキまでに避難を終わらせる
  • 黒の『緊急安全確保』の発令は待ってはいけない!(既に発災している可能性が考えられる)



天気予報で『明日は不安定な天気で、一部山沿いでは雷雨になるでしょう』と毎日のように聞かされています


メディアの伝え方にも言及すべき箇所はたくさんありますが、自分の身を自分で守るために意識しておくことを強くオススメします


スマホのアプリや検索サイトの災害情報も気象庁の情報を軸にしていることをお忘れなく!


停電と交通インフラ



意外と見落とされがちなのが停電時のエアコンが使えないことによる熱中症です


『家屋への被害は全くなかったものの、地域一帯が停電してエアコンが動かず搬送』という事例も珍しくありません(実際の知人の救急救命士さんの話です)

台風の接近時は窓を開けることはできず、停電が起きた途端に蒸し風呂状態になります


頭がボーッとしてくる前に首や脇の下の太い血管を冷やし効率よく身体を冷やします

喉が乾く前に小まめに水分を補給し涼しい格好で台風が過ぎるのを待ちましょう


※調子が悪くなったら絶対に無理をせず救急を!到着が遅くなることを考えて早めに対処!



もうひとつの大きな被害として交通インフラが遮断されることも考えられます




今回の東北・北陸地方を襲った集中豪雨でも河川の増水のよる橋の陥落で線路が遮断され電車がストップ、土砂崩れによる通行止めで孤立する集落も発生する事態が起きてしまいました


石川県では自衛隊に災害派遣を要請し救援を求めるなど台風が来た訳でもない大雨でここまで甚大な被害が起こっています

毎年必ずやってくるこの季節に向けて日本政府の対応を注視しておく必要があるでしょう



過ぎ去った後も警戒が必要



集中豪雨や台風が過ぎ去った後も油断してはいけません

今回の最上川のような『長い河川の上流』で洪水が起こってしまった場合すぐに水が引くことはありません


半日以上かけて上流に溜められた雨水が下流に流れていきますが、カーブの強い場所や細くなっているところで越水の可能性を警戒する必要があります

その状況で再び雨が降れば、仮に越水していないぎりぎりの状態でも配管を逆流してマンホールから内水氾濫が起きてしまいます

※比較的短めの河川でも下流は注意が必要です


土砂災害の警戒にも引き続き注意が必要で、大雨にあてられた土壌=山・崖の中の水分が多くなり地盤全体を緩めてしまいます

雨が上がった次の日の気温が上がり表面だけが乾いても油断なりません

表層面のもっと下の湿った部分からズルッと滑り落ちて土砂が崩れ落ちてきます


『自宅は平気だろうか?』

『2階に置いてきてしまったペットが心配』

お気持ちは充分にお察しできます!災害発生時とその後は不安に駆られない人はいません!


ですが河川の側、崖の側に居住の方は小康状態になった後でもすぐには戻らずに状況をしっかりと見極めた上で行動に移しましょう



万が一巻き込まれて二次災害に遭うことがないように!



大雨・台風が『来る前』の備え



災害に立ち向かうには自身を守ることが最重要ですが、その後の生活のことも考えなくてはなりません

無事に帰った後に【準備を怠ったがため】に余計な苦労やお金がかかることが考えられます


自分の財産=住まいと災害後の生活を守るためにできることをやっておく

その日が来る前に日頃から準備をしておきましょう


水に浸かってはいけないものは高所へ



  • 1階にある家財
  • 車やバイク、自転車
  • 物置の中身
  • 遊具等



浸水の被害が想定されている時にそのままにしておく方はほとんどいません

車やバイクは事前にリスクの少ない場所(近隣の立体駐車場など)に避難される方がほとんどでしょう


大雨の時に見落としがちなのは物置の中身です

普段使わないものを外の物置にしまってありますが、いざ使おうと手に取ったキャンプ道具が水浸しでカビだらけに!

ガーデニング用の土も水に濡れて臭いを出していたりと手がつけられなくなるかもしれません


続いて1階の家財の被害

ソファやクローゼット(中身も)、カーペットやもしかしたらテレビも浸水する可能性があります

手に持って移動できるものであれば2階に避難できますが、据え置いてあるものは動かす時間もないでしょう


移動できるもの以外は火災保険の『家財特約』で補償を受ける必要があります(もしくは実費負担)



飛ばされそうなものを片付ける



  • 自転車・バイク
  • 植木鉢(高所にあるものは特に)
  • 物干しの竿
  • 劣化したラティスやフェンス、波板で出来た物置の屋根
  • 窓ガラス(要、飛散防止フィルム)
  • アンテナ(特に風を受けやすいBSアンテナや壁面アンテナ)※
  • 屋根瓦・棟包※


失火ノ責任ニ関スル法律(失火責任法)という法律があります

『重大な過失がない時は民法上の不法行為責任の規定は適用されないため、隣家に対して損害賠償責任を負いません(故意、重過失あり、爆発を除く)』というものです


この法律に則っている部分が多い火災保険の災害特約では、台風時に自分の家の〇〇が飛ばされて隣の車を傷つけてしまった場合に加入している火災保険で直すことができない場合があります(加入している特約によります)


また逆のケースの場合も考えられます

自分の家の窓ガラスにどこかの家のアンテナが飛んできて割れてしまい、窓ガラスだけではなく部屋の中の布団も濡れてしまった


飛ばした相手が特定できても基本的には相手の火災保険で直すことはできないケースがほとんどで、自身で加入している火災保険で補償をことになります



事故が起きてしまった時にご近隣同士でのトラブルのもとになりかねません

『あなたのお家!片付けてないじゃない!』と言いがかりをつけられないように、飛ばされそうなものは固定しておきましょう



※印の箇所は高所に設置されているものなので専門業者に確認してもらいましょう(屋根から落ちたら大変です)



被災者生活再建支援制度(国の公的支援制度)と火災保険の見直し



日本には災害に遭ってしまった国民に対して被災者生活再建支援制度というものがあります

全壊等または大規模な半壊の場合に最大で300万円の支援金が出ます


ですがこの『全壊等・大規模な半壊』に該当しない場合は被災者自身で負担しなくてはなりません


その場合の補償として火災保険があります

(例外を除く)マイホーム所有のほとんどの方が加入されている火災保険ですが、その内容によっては満足な保険金が足りなかったり、全く出ないケースが多々あります


加入時に保険料を抑えるためにプランを削ってあったり、そもそも特約をつけていないケースがほとんどで、いざ使おうとすると役に立たない


住宅を購入した時から環境は大きく変わり加入している火災保険がマッチしていない?


使えなければお金を捨てているだけになってしまいます

自動車保険のように1年に1回の更新がある訳ではないので、定期的に自分で見直す必要があります

確認して今よりメリットがあれば変えることを検討、補償が充実しているようであれば安心してそのままにする


自分の財産は自分以外が守ってくれることはありません

確認しておくことが重要です



賛否両論ある『流域治水』



先日のNHKのある番組で特集が組まれていました

『今の治水能力では豪雨を受け止めきれない。河川のみでなくその周りのエリアを使って豪雨を受け止める』


流域治水という考え方だそうです


番組を見ていて矛盾と憤りを感じました


想定を超える場合

  • あえて河川を溢れさせて住宅密集地の被害を最小限にする
  • 学校や田んぼなどのエリアを中心に溢れさせる
  • そこに住んでいる人がいる場合は協力を得る


こんなやり方って許されるのでしょうか?

そもそも今まで被災した方々の気持ちは?

そこに住んでいる人もお米を作っている人の苦労は?


名将・武田信玄公『治水の祖』が聞いたらなんて言うでしょうか


治水工事は莫大な予算がかかるのはいうまでもありませんがもう少しやり方があると思います

土地絡みで左右に広げるのが難しいのであれば下げて容量を増やす(堤防は脆くなる場合があるので)


雇用も増えるし言うことなし!と個人的には考えます




まとめ

避難と避難準備のまとめ

  • 避難できるように日頃から準備しておく
  • 避難は明るい時間に迅速に(警戒レベル4まで)
  • 気象庁のHPキキクルを活用しリスクを回避
  • 災害が過ぎ去っても油断せず慎重に行動する


日常と被害が予想される前に済ませておくこと

  • 水に浸かってはいけないものを高所へ移動する
  • 日常から飛ばされそうなものを片付け・固定しておく
  • 万が一の被災後は国の支援を受けられる場合がある
  • いざという時の火災保険を見直しておく


最上川の氾濫は一昨年前にもありました

『またか…』というインタビューがニュースで放送されています


我々個人ができることは備えること

いつ起こるかわからないことに備えなくてはならないのは、日々の忙しさの中では後回しになってしまいます


ただ起こってしまってからでは後悔しか残りません


備えあれば憂いなし

どうか皆様と皆様の大切な人が無事でありますように


今まさに災害に直面している被災者の皆様、どうか無事を祈ります