災害後の国の支援と火災保険【今確認しておくべき】3つのこと

この記事は以下の人に向けて書きました
  • 大雨、台風、地震などの災害で被害に遭ってしまった方
  • 戸建所有で水害の不安のある方(住宅ローン支払い中の方)
  • 住宅ローンは払い済みの方
  • 建てたときは気にしなかったけど最近の豪雨で不安な方
  • 実際に罹災してしまった方

記録的短時間大雨情報なんて新しい言葉が出来てしまうくらい、想定を超える豪雨に遭ってしまう日本


浸水・洪水・土砂崩れ


実際に罹災してしまった時のことを考え『今確認しておくべき3つのこと』をまとめました

どうか自分の身を守るのと一緒に自分の大事な資産を守ることにお使いください


被災者生活再建支援制度(国の公的支援制度)


災害により住宅が全壊するなど、生活基盤に著しい被害を受けた世帯に対して最大300万円の支援金が支払われる公的支援制度


300万円は『基礎支援金』と『加算支援金』の合計額

※単身世帯の支給額はそれぞれ1/3に減額される


住宅の被害程度に応じて支給される支援金(基礎支援金)

全壊等大規模半壊
支給額100万円50万円



住宅の再建方法に応じて支給される支援金(加算支援金)

建築・購入補修賃借(公営住宅を除く)
支給額200万円100万円50万円


なお、「全壊等」には以下の世帯が含まれます。

  • 住宅が半壊し、または住宅の敷地に被害が生じた場合で、住宅の倒壊防止、居住するために必要な補修費等が著しく高額となること、その他これらに準ずるやむを得ない事由により、住宅を解体し、または解体されるに至った世帯(解体世帯)
  • 噴火災害等で、危険な状況が継続し、長期にわたり住宅が居住不能になった世帯(長期避難世帯)

※地方公共団体によっては、住宅被害を受けた世帯等に対し独自に支援金等を支給する制度を設けている場合があります

(内閣府・防災情報ページより一部抜粋)




貰えないよりは断然良いものの、ハッキリ言って足りません

壊れてしまうのは建物だけではなく家財も新しくする必要があるかもしれません

大規模な半壊に該当しない罹災は出ないこともあります

当然ながら全額支援できる用にシステム化するのであれば日本の税率がとんでもないことになるのは明白です


とりあえず国からの援助は

  • 全壊してしまって建て直したり購入し直したら300万円
  • 大規模に半壊して直したら150万円
  • 全・半壊に問わず引っ越して借家への引っ越しは+50万円

このように理解しておきましょう



一般的な民間の損害保険(火災保険)補償条件と保険料


現在住宅ローンを払っている方であれば、ほとんどの方が民間の損害保険会社の火災保険を組み込まれたカタチで返済されているでしょう


問題は補償の内容です


  1. 支払われる保険価額を【時価額】か【再調達価額】のどちらかに設定、支払う保険料も変わる
  2. 建物や家財が保険価額の30%以上の損害を受けた場合に補償が受けられる
  3. 洪水などによる床上浸水が発生した場合、もしくは地盤面から45cmを超える浸水による損害を受けた場合に補償が受けられる
  4. 集合住宅などの上層階からの水漏れ(洗濯機の排水など)は支払われない
  5. 雹(ひょう)や雪による建物の被害は雹災・雪災での補償となる
  6. 水災の原因が地震や噴火による津波の場合は『水災(水災特約)』では支払われない

※詳しくはご加入の保険会社にご確認ください


①時価額・再調達価額と保険料

罹災した時に1番気になるのが『また建て直せるのか?』




時価額の場合…

保険価額を【時価額】設定とした場合の火災保険に加入されている場合は、ほとんどのケースが全額補償とはならないでしょう(新築でも厳しい場合があります)

その代わりに【再調達価額】の保険に比べて保険料が安く設定されているのがメリットですが、全壊と査定された場合でも建て直す場合の不足分は実費負担となります



罹災してしまった時に条件に合うなら絶対に活用したいのがこの制度!

災害復興住宅融資(住宅金融支援機構)

災害で罹災した住宅の早期の復興を支援するため、災害により滅失・損傷した家屋の復旧に対し、低利な資金を供給するもの。住宅を建設する場合の融資限度額(基本融資額)1,650万円等、住宅再建方法により融資限度額、返済期間等が異なります。


※内閣府・防災情報ページより抜粋


火災保険で足りない分の実費負担を低金利で融資してくれる制度があります

住宅ローンと二重になってしまうことになりますが【借り換え】よりも安く済むケースもあるので、焦らずに確認しながら考えましょう

有事の際は普段よりも待たされてしまいますが市区町村の役場で教えてくれます



再調達価額の場合


火災保険で対象となる建物や家財を再築・再所得するために必要な補償が受けられます


保険の補償を十分に受けて、罹災後も再スタートすることが可能で金額面の心労がないことがメリット


ですが、支払わなくてはならない保険料が高額に設定されていることが一般的で、ある意味『人を選ぶ』火災保険となっています

万が一の時は全額補償で建て直せます!払えるならこっちが良いに決まってます!

でもびっくりするくらい高額なのでライフスケジュールに合わせて決めましょう


わざわざ高額な再調達価額がある理由(考察)

家を建てる時、わざわざリスクの高いエリアにマイホームを建てる?という人は珍しいでしょう。ですが日本ではさまざまな理由で各地に建物があります。例えば大きな河川の側に居住する『先祖代々の土地を末代まで残すことを使命』とした地主の方は、余程のことがない限りそこから移住することはありません。

万が一の時、そのような方々のニーズに応えられるように再調達価額の設定があるのかもしれません。


②損害の程度による支払い条件

加入する保険内容によって変わります

例えば加入されている保険が『30%以上の損害があった場合に補償します』という内容だった場合、それに満たない場合は補償が受けられません

日本の損害保険は保険業法を元にいろいろな商品を消費者に販売しています

『一部だけ壊れてしまったけど補償を受けられないかな?』というケースがたくさんあります

加入されている保険の補償内容と支払い条件は必ず確認し、現在の生活状況や近年の災害に適していない場合は組み替えをご検討ください


お金を払っているだけで有事の際に使い物にならなければお金を捨てているだけになります

せっかく払うのであれば意味のあるものに!


③水災で保険金が出ない?保険の内容を見つめ直す

マイホーム購入時の火災保険の補償内容のを覚えていますか?

購入して住んでみて、思ったより水害のリスクを感じている方も少なくはありません


下記の表のように、保険料を抑えるために上限を抑えたプランに加入されている方が多く、被害を受けた際に『保険金が出ない・足りない』方が急増しています


住んでいる地域の現在の状況に合わせて確認することをお勧めします


また補償内容の見直しは、内容を充実させることだけではありません


逆に住んでいる地域に洪水による浸水リスクが少ないのであれば、その分の保険料を安くする保険プランも存在します

時価額⇆再調達価額だけでなく【補償内容】にも注目しましょう


床上浸水または地盤面から45cmを超える浸水(一例)

支払要件再調達価額の15%未満の損害を受けた場合再調達価額の15%以上30%未満の損害を受けた場合再調達価額の30%以上の損害を受けた場合
損害保険金の支払金額保険金額×5%
(上限100万円)
保険金額×10%
(上限200万円)
損害額または保険金額×70%


再調達価額の条件と補償金額を変えることで保険料を下げることができるでしょう

お住まいの地域に災害リスクの種類が違うことが多いので、見直しの際は保険会社さんに相談に乗ってもらいましょう

火災保険を見直す時のポイント

数ある保険会社全てに問い合わせをして各社を比較・検討していくのは大変な作業になるしとても面倒です。

損保でも生保でも色々な保険会社の商品を一括して扱える『保険代理店』というものがあります。

『保険代理店』のスタッフは日頃から各社の商品を扱っていることから、加入者のニーズに合った商品を選定してくれます。

そして1番大きなメリットは『特定の保険会社の商品だけを選ばなくて良い』こと。


〇〇損害保険会社で選ぼうとすれば、その会社の商品だけが選択肢になってしまいます。


家電で例えるなら『テレビと電子レンジはパナソニック、冷蔵庫と洗濯機は日立が値段を頑張ってくれた』のように選択肢がある方が、加入者にとって嬉しい話です。


実際の火災保険では特約ごとに保険会社を選定することは不可能ですが、各社の特徴と保険料の比較は可能です。




④⑤罹災した内容によって使える保険内容が変わる

罹災した災害によって使う部分が変わります

マンションなどの上層階からの水濡れは【水災】に該当していません

雹(ひょう)や雪で損害を受けた場合は雹災・雪災にそれぞれ該当

こちらも加入している保険によって補償内容が足りない場合、多い場合があるので併せて確認することをお勧めします

例えば『雪の少ない、降らないエリアに雪災特約は要らない』とチョイスできるプランがあれば良いですね


⑥地震保険について

地震による津波が原因の水災は火災保険の『水災(水災特約)』では支払われることはありません

その他にも地震が原因となる火災による被害、建物の倒壊も火災保険では支払われません


残念ながら地震の際の補償を受けるのであれば、東日本大地震で見直された地震保険の加入が必要となります


ご存知の方も多いとは思いますが、少し前までの地震保険では50%までしか補償されない地震保険がほとんどでしたが、近年(2022年頃)にやっと+50%を補える特約がつけられる保険商品が出来ました


京都大学・鎌田先生が筆頭に、地震学に基づく予測から

『今後30年以内に南海トラフ大地震が起こる確率は90%以上』と言われています


仮に2030年代の後半に起こるとして残り10数年のカウントダウンが始まっていると考えても良いでしょう

地球は気まぐれです

もしかしたらその日は明日かもしれません!


備えは足りていますか?

※噴火については地震保険でも補償されません



近年増加傾向にある水災と保険料



令和4年3月末の【火災保険水災料率に関する有識者懇談会】の報告書によると、『近年の自然災害の増加により保険金支払いが大幅に増加傾向にある』とのことです


特に、2018年・2019年の風災と水災を中心に大幅に増加し、2年連続で1兆円を超える水準となっていて、多くの損害保険会社の【火災保険収支】が赤字が常態化しているそうです


保険会社の運営の仕組み

保険会社の経営においては【相互扶助の理念】が全ての礎となってます。

『平和な時にみんなからお金を集めておいて、何か起きた時にそのお金から困っている人を助ける』いわゆる【互助会】が大規模になったものと考えれば誤解はありません。

保険会社の商品=火災保険などを販売して、直接の利益を出すことができない保険会社は、加入者から集めた保険料の一部をもとに【運用】というかたちで有事に備えています。



有識者懇談会の報告書を全部読まなくても、毎年の災害のニュースを目にすれば、集めた保険料だけで万が一の保険金支払いはおろか、経営すら成り立たない可能性があるのも想像に難しくありません


そして国土交通省は令和4年6月に有識者懇談会の報告書をもとに【火災保険水災料率の細分化】についての話し合いと資料が発表されました(ネットでも見れます、一部ニュースでも一言でサラッと伝えてはいたのを確認してます)


国土交通省の資料を読み解いて簡単に解説すると以下の通り

  • 水災増えてるよね、大変だ!
  • 赤字?それは理解できます!
  • 保険料上げる?でもそうするとリスクの少ない地域の人は水災特約つけないよね?


リスクの高い特定の地域の加入者のみ料率を上げると不満が出ます

しかし加入者全体の【水災料率】を上げてしまえば特約を外されてしまい保険料が集まりません


結局どちらの方法も公平性は保たれず解決には至らない、ということでこれからも話し合いが続くことになるでしょう


これは想像の域を越えて欲しくはありませんが、もしかしたら今後【水災料率】のみでなく全体的な保険料金の値上がりが来るかもしれない、と筆者は考えます


昨今の先行き不透明な世界情勢で、加入者から集めた保険料の【運用】が上手くいくとはとても思えません

それでも水災は毎年のようにやってきます


・これからマイホームを建てるときに加入する火災保険料が上がるのか?

・今現在に加入している火災保険保険料も一緒に上がるのか?


こればかりはフタが開いてみないと答えは出ません

今後の動きに注目しておきましょう




まとめ


  • 国の支援金があるが、建て直しには足りない
  • 民間の損害保険会社の火災保険で不足分を補うようにする(時価額・再所得価額を選択)
  • 災害ごとに補償される特約の種類が分かれている
  • 地震保険は特約に含まれず、別途契約が必要(保険金の内容が近年充実)
  • 災害が増加傾向にある近年、保険料率の話し合いが進みつつある


今加入の火災保険で補えるか?

少しでも安くできないか?

地震保険の見直しは?


万が一の時に『使い物にならなくて結局は金だけ払っていた!』なんてことに絶対ならないように、ご加入の保険内容を今一度ご確認されることを強くオススメします


昔こんな話がありました

『この保険、日帰り入院には対応していないので保険金が支払われません』

これは生命保険の話ですが、加入している保険が【古くなり時代に合わなくなる】ことがあります


もちろん確認してみて補償内容が十分であれば、そのまま継続すればいいと思います

今後の大幅な料率改定が発表される前にどうか【確認・比較・検討】を!